・タイトル
セッション(原題“Whiplash”)
・監督
デミアン・チャゼル
・出演者
マイルズ・テラー
J・K・シモンズ
メリッサ・ブノワ
他
・公開年
2014年
ドラムに焦点を当てた音楽好きにはもってこいの作品。見方によっては賛否両論分かれる作品になっているが、見応え十分なものとなっている。ただ、圧巻の一言。
オススメ度 ★★★★☆
・あらすじ
世界的ドラマーを目指し、名門音楽学校シャファー・コンサバトリーに入学したアンドリューを待っていたのは、伝説の鬼教師フレッチャー。常人に理解できない完璧を求め、浴びせられる容赦ない罵声と暴力。やがてレッスンは狂気を帯び、加速の一途を辿る…。
・感想 ネタバレ含む
この作品、音楽映画でありますが、ドラムの良さを最大限に生かしドラムにだけ焦点を合わせた作品となっています。
ストイックにドラムに向き合うニーマンとその才能を見い出し指導するフレッチャーの物語。
一流になるって並大抵のことじゃないんだね。
辛い練習を乗り越え努力したものだけが辿り着く境地と言えるかな。
ですが、フレッチャー教授の指導の熱の入り方は異常。
登場した時のあの威圧感は鬼とも思えるほどでしたよ。笑
そんなフレッチャー、音程が合わないやつがいると犯人探しをし始めるシーンがあるのですが、犯人特定してすぐに、
「足手まといも限界だデブ野郎!音程よりも飯が大事か!出て行け!」
と、メンバーの一人を罵り容易く排除し始めるんですよ。
鬼軍曹すぎる…。
音楽の世界ってこんなに歪んだものなんですかね。
そんな鬼軍曹フレッチャーに認められようと、ニーマンは血の滲むような努力をします。
罵倒されながらも暴力を振るわれながらも彼は耐え凌ぎ、一流のドラマーになるため必死でした。
自分の夢を実現するためなら何がなんでも叶えたい欲がひしひしと伝わってきましたね。
ですが、ライバルの出現や、フレッチャーから認められない悔しさから自暴自棄になっていく姿には怖さと狂気すら感じました。
そんなニーマンは、親戚がエリートであり、そのことに対し劣等感を抱いているのだと感じました。
自分は一流のドラマーになって見返してやる!
ってな感じで火がついたんだと思います。
そこに油を注ぐように、フレッチャーからの罵声、暴力の嵐。
普通の人ならすぐ挫折しちゃいますよ…。
音楽という芸術に向き合うということは、並大抵ではなく、自分の人生をかけ挑むものだと感じました。
音楽に没頭するあまり彼女まで手放したニーマン。
そこまでしてドラムに向き合うひたむきさは有無を言わさないほどの切迫したものでした。
物語の終盤、フレッチャーがニーマンに言います。
「最も危険な言葉は上出来(グッド・ジョブ)だ」
この言葉、何かにストイックに向き合った人ならわかるはず。
誰しも認められ上出来だと言われることを終着点としている人が多い気がします。
上出来と言われれば、人間それ以上のものは発揮できない、しないのが大抵だと思います。
フレッチャーはあえて教え子に上出来という言葉はかけず、罵り悔しませることでその才能を引き出そうとしていたのでしょうか。
そこでニーマンは逃げることもせず甘えたりもせず、自らの夢に向かって努力する姿には尊敬しました。
フレッチャー率いる楽団に招かれたニーマン。
フレッチャーは大学院を辞めさせられた原因がニーマンだと勘違いし、楽譜を用意しないという復讐をします。
ですがニーマン、フレッチャーの指揮などおかまいなしに自分のペースでドラムを叩き始め、場内を魅了していきます。
圧巻のパフォーマンス。
血の滲むような努力をしたニーマンだからこその音楽を奏でます。
ラスト9分19秒はニーマンの全てが凝縮された素晴らしい演奏となっていた。
そこではフレッチャーがニーマンをサポートし始める。
ニーマンがその境地に達したことを認めたという何よりの証拠であり、ニーマンとフレッチャーの立場が逆転した瞬間でもありました。
ドラム演奏も終盤に差し掛かり、観客含めフレッチャー、ニーマンの興奮が最高潮に達したところで、管楽器のハーモニーに合わせキャラバンの演奏に幕を閉じる。
そしてすぐにエンドロールに。
すぐにエンドロールにいく流れがいいですよね。
興奮しきった状態でスパッと終わる。
潔い。
この瞬間がラスト9分19秒を興奮冷めやらぬ素晴らしいものとさせている。
最後にこれだけ、
夢を実現する難しさ、ひたむきに追い続ける姿には感動の一言でした。
この映画、全体的に暗く、ニーマンの心情をそのままスクリーンで表現しているかのようでした。
ラストの演奏シーンでは、スポットライトが心に差し込んだ光として表現されてるのかなと思ったり。
そういった情景と心情の変化にも注目して観るとより楽しめるかもしれませんね!
ということで、
長くなりましたが、このへんで。
それでは。